2018年9月12日(水)
子どもの食事と栄養 気になる偏食VS気にしなくてよい偏食
子どものときの給食の思い出にはどんなものがありますか。大好きなメニュー、苦手だったメニュー。当時は嫌いだったけれど、大人になって食べられるようになったものなど。
今回はお子さんの偏食が気になっているお父さん、お母さんのために、栄養教諭の石丸美千代先生から「気になる偏食、気にしなくてよい偏食」についてお話を聞きました。
今回はお子さんの偏食が気になっているお父さん、お母さんのために、栄養教諭の石丸美千代先生から「気になる偏食、気にしなくてよい偏食」についてお話を聞きました。
一日の約3分の1のエネルギーを給食で摂取
給食は一日に摂取すべき栄養量の約3分の1が摂取できるようバランスよく計算されています。中でも日常的には取りにくい栄養素は多めに配分されるなど工夫されています。
<参考>児童一人一回あたりの学校給食摂取基準 ※児童8~9歳の場合
<参考>児童一人一回あたりの学校給食摂取基準 ※児童8~9歳の場合
例えば、カルシウム。色々な食品に含まれていますが、意識していないと必要量が摂りにくい栄養素です。
牛乳は200mlで227mgのカルシウムが摂取できるため、給食メニューとして採用されています。
「給食のない土、日など休日にはカルシウムの摂取量は下がるんですよ」(石丸先生)
和食に牛乳は合わないと言われながらも、カルシウムを摂取できる食品であるためメニューから外しにくいようです。
同様に鉄分も日常的には取りにくい栄養素です。そのため鉄分も給食では少し高めに基準値を設定してあります。
牛乳は200mlで227mgのカルシウムが摂取できるため、給食メニューとして採用されています。
「給食のない土、日など休日にはカルシウムの摂取量は下がるんですよ」(石丸先生)
和食に牛乳は合わないと言われながらも、カルシウムを摂取できる食品であるためメニューから外しにくいようです。
同様に鉄分も日常的には取りにくい栄養素です。そのため鉄分も給食では少し高めに基準値を設定してあります。
お家でも参考にしたい給食の工夫
子どもたちの苦手なメニューによく挙がるのが「酢の物」「煮物」。調理方法一つで子どもたちの苦手意識はガラリと変わります。これらのメニューは給食では少し甘めに仕上げ、子どもたちが食べやすいように工夫してあります。
椎茸や茄子は「にゅるっとするから」と、苦手の理由に食感を挙げる子がいます。苦手と言われる野菜でも切り方や調理法を変えれば食べやすくなります。
例えば、五目煮豆のようなものはあまり喜ばれませんが、カラッと油で揚げてスパイスを合わせた『スパイシー豆』ならクリスピーなスナック感覚で、子どもたちは喜んで食べてくれます。
「苦手な茄子は小さく切ってカレーに入れるとよく食べてくれます。成長と共に味覚が発達して、だんだん食べられるようになってきます。味覚も学習です。色々な食材に出会い、食べてみる機会を作っているのだと長い目で見てあげてください」(石丸先生)
椎茸や茄子は「にゅるっとするから」と、苦手の理由に食感を挙げる子がいます。苦手と言われる野菜でも切り方や調理法を変えれば食べやすくなります。
例えば、五目煮豆のようなものはあまり喜ばれませんが、カラッと油で揚げてスパイスを合わせた『スパイシー豆』ならクリスピーなスナック感覚で、子どもたちは喜んで食べてくれます。
「苦手な茄子は小さく切ってカレーに入れるとよく食べてくれます。成長と共に味覚が発達して、だんだん食べられるようになってきます。味覚も学習です。色々な食材に出会い、食べてみる機会を作っているのだと長い目で見てあげてください」(石丸先生)
酢の物は甘めに仕上げると子どもが食べやすい味に。
子どもの好きなもの、嫌いなものが変わってきている
かつて、子どもの嫌いな野菜として人参は上位に来ていました。ところが最近では人参嫌いの子どもは減ってきていると石丸先生は言います。
「最近では離乳食の時から人参のペーストを使うことが多いせいか、人参嫌いという子はあまりいません。やはり食べ慣れているという経験が大きいのではないでしょうか」(石丸先生)
食べる経験が好き嫌いを作っていることが、子どもの好き嫌いの傾向からも見えます。
最近のアンケートで嫌いなものの上位に出て来るのがゴーヤです。夏の定番食材としてスーパーで売られているのもよく見るようになりました。グリーンカーテンとしてゴーヤを育てているご家庭もあるのではないでしょうか。20~30年前には嫌いな野菜の筆頭にゴーヤが挙がることは考えられませんでした。学校によってはゴーヤチップスが給食に出るところもあるといいますから、子どもたちにとっては苦手な食材が給食に加わってしまったというべきかも知れません。
逆に好きなものを尋ねるとアボカド、マンゴーなどが子どもたちから挙がるようになりました。
好きなものは子どもによって様々ですが、食生活が多様化し、また食材もグローバル化していることが見えてきます。
「最近では離乳食の時から人参のペーストを使うことが多いせいか、人参嫌いという子はあまりいません。やはり食べ慣れているという経験が大きいのではないでしょうか」(石丸先生)
食べる経験が好き嫌いを作っていることが、子どもの好き嫌いの傾向からも見えます。
最近のアンケートで嫌いなものの上位に出て来るのがゴーヤです。夏の定番食材としてスーパーで売られているのもよく見るようになりました。グリーンカーテンとしてゴーヤを育てているご家庭もあるのではないでしょうか。20~30年前には嫌いな野菜の筆頭にゴーヤが挙がることは考えられませんでした。学校によってはゴーヤチップスが給食に出るところもあるといいますから、子どもたちにとっては苦手な食材が給食に加わってしまったというべきかも知れません。
逆に好きなものを尋ねるとアボカド、マンゴーなどが子どもたちから挙がるようになりました。
好きなものは子どもによって様々ですが、食生活が多様化し、また食材もグローバル化していることが見えてきます。
気にしなくていい偏食ってあるんですか?
「野菜が嫌いで全く食べない。魚が嫌いで全く食べない。そういう偏食でない限り、あまり気にしなくて良いですよ」(石丸先生)
ゴーヤは食べられなくても、他の野菜はたくさんあります。全く同じ栄養成分のものこそありませんが、幅広く色々なものを少しずつ食べれば栄養は十分補えます。そのため、極端な偏食でない限り、おおらかな気持ちで見守ってあげて欲しいと石丸先生は考えています。
昔は給食に嫌いなものが出たときは無理してでも食べなければダメという風潮がありました。しかし、これで嫌いなものを克服できたという方が多くいるでしょうか? 無理に食べさせられたというイヤな記憶だけが残ってしまい、逆にもっと嫌いになってしまったという人もいるのではないでしょうか。
最近では、嫌いなものを無理に食べさせるというより、少しだけでも食べるという経験を重視する傾向があります。
味覚体験を重ねながら、子どもの味覚発達を気長に待つ。そのうち、苦手だったものがだんだん食べられるようになってきます。子どものうちは色々な味の食べ物があること、調理法によっては食べやすいものもあるという経験を重ねて欲しいと石丸先生は話されました。
ゴーヤは食べられなくても、他の野菜はたくさんあります。全く同じ栄養成分のものこそありませんが、幅広く色々なものを少しずつ食べれば栄養は十分補えます。そのため、極端な偏食でない限り、おおらかな気持ちで見守ってあげて欲しいと石丸先生は考えています。
昔は給食に嫌いなものが出たときは無理してでも食べなければダメという風潮がありました。しかし、これで嫌いなものを克服できたという方が多くいるでしょうか? 無理に食べさせられたというイヤな記憶だけが残ってしまい、逆にもっと嫌いになってしまったという人もいるのではないでしょうか。
最近では、嫌いなものを無理に食べさせるというより、少しだけでも食べるという経験を重視する傾向があります。
味覚体験を重ねながら、子どもの味覚発達を気長に待つ。そのうち、苦手だったものがだんだん食べられるようになってきます。子どものうちは色々な味の食べ物があること、調理法によっては食べやすいものもあるという経験を重ねて欲しいと石丸先生は話されました。
苦手な食材でも調理法によっては食べられることも。
煮魚は嫌いでも寿司なら食べられる子もいます。
煮魚は嫌いでも寿司なら食べられる子もいます。
注意したい偏食とは?
「同じものばかり食べるのも偏食です。例えば炭水化物ばかり食べたがるのは健康的な食事とは言えません」(石丸先生)
ビュッフェで多くのメニューが並んでいるのに、同じものばかりを取って食べるのも偏食の一つです。バランスよく食べられるよう「他のものも食べようね」と声をかけることが必要でしょう。
ただ、偏食には潜在的なアレルギーや病気などが隠れていることがあるので要注意です。症状に出ていなくても、食べると何となく具合が悪いというようなことがあります。子ども自身は体調の変化と気分の変化をきちんと区別できないため、「嫌い」という言葉で片付けてしまうことがあるそうです。
好き嫌いを突き詰めると実は体調の変化に要因があることがあります。体が受け付けないものは体が無意識に避けようとする防御反応が働くため、そんなときは無理に食べさせようとせず、別の食材で補ったり、様子を見て欲しいと石丸先生は話されました。
ビュッフェで多くのメニューが並んでいるのに、同じものばかりを取って食べるのも偏食の一つです。バランスよく食べられるよう「他のものも食べようね」と声をかけることが必要でしょう。
ただ、偏食には潜在的なアレルギーや病気などが隠れていることがあるので要注意です。症状に出ていなくても、食べると何となく具合が悪いというようなことがあります。子ども自身は体調の変化と気分の変化をきちんと区別できないため、「嫌い」という言葉で片付けてしまうことがあるそうです。
好き嫌いを突き詰めると実は体調の変化に要因があることがあります。体が受け付けないものは体が無意識に避けようとする防御反応が働くため、そんなときは無理に食べさせようとせず、別の食材で補ったり、様子を見て欲しいと石丸先生は話されました。
豊かな食生活を楽しむことを学ばせたい
最後に食事のマナーについて。苦手なものはダラダラ食べをして、食べ残していることがあります。食べる前に減らしてもらうよう指導することも大切です。食べ残したものはゴミとして処分するしかありません。食べ物を無駄にしないためにも食事のマナーは身に付けさせたいものです。
食事は文化の一つです。日本の伝統的な食事の他にも、世界中の食文化が混じり合い、現代の豊かな食文化が形成されてきました。好きも嫌いも色々な味を体験しながら味覚が発達し、大人の味覚が完成していきます。
「これも食べられた」「少し食べてみた」という味覚体験を積み、何でも「食べられる」という自信を作って行きたいですね。
食事は文化の一つです。日本の伝統的な食事の他にも、世界中の食文化が混じり合い、現代の豊かな食文化が形成されてきました。好きも嫌いも色々な味を体験しながら味覚が発達し、大人の味覚が完成していきます。
「これも食べられた」「少し食べてみた」という味覚体験を積み、何でも「食べられる」という自信を作って行きたいですね。
- 石丸 美千代(いしまる みちよ)
管理栄養士/広島県栄養士会 学校健康教育事業部長
(所属 呉市立下蒲刈中学校 栄養教諭)