子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、発達障害かもしれません。

今回のご相談「かもしれない」とのこと。「発達障害だ」と明確に言える状態ではなく、「どちらなんだろう」と考えているグレーの状況だと言えますね。もともと、「発達障害」の中でも特に「自閉スペクトラム症」は、明確な線引きが難しくスペクトラム(連続体)だと考えられている概念ですので、どう考えたら良いのか悩むところです。

今回は一般的な「発達障害」の基礎知識については他のHPに譲るとして、「発達障害」についておうちの人がどう捉え考えるかについてのヒントと、「発達障害かも」と感じた時、おうちでの対応のポイント、それでも心配な時にどう相談に行けば良いのか、これらの点についてお伝えしたいと思います。

「発達障害」について考える前に、子どもたちの成長や発達は個人差が大きく、個人内でも差があることをおさえておく必要があります。例えば、「他の子と比べてたくさん漢字を知っていて計算もできてお勉強は得意だけれど、相手からの比喩や皮肉の意図がさっぱりわからない」「一輪車や縄跳びは苦手だけれど、図工では驚くような素敵な作品を製作できる」「とても優しくて相手の気持ちをきちんと考えられるのに、自分がそれをしたらどんなことが起るのか見通しを立てることは苦手」など、私たちにも子どもたちにも、得意・不得意の凸凹は必ずあるのです。そして「発達障害」の子どもたちは、この凸凹の差がとても大きいのです。「苦手な事が多くできない子」ではなく、「苦手もあるけれど、すごい才能を持っている子どもたち」なのです。
●そもそも「障害」とは?
この「害」という漢字の印象からか、一般的にあまり良いイメージを持たれないように感じます。「自閉スペクトラム症」の症状がどんなに濃く出ていたとしても、本人も周囲も日々の生活で困ることがないのであれば診断は必要ありません。逆に、症状がどんなに薄くても、本人が毎日困っているのであれば、診断を受け、支援を組み立て、楽に生活できるように環境を整える必要があるのです。

例えば、Aちゃんはピアノが得意な女の子。でも学校の教室が苦手で、特に音楽の授業は決まって気分が悪くなり、いつも保健室に行っていました。医療機関を受診し聴覚刺激に敏感だとわかり、学校と連携してイヤーマフや耳栓を使い分けるように環境を整えたところ、教室で過ごせるようになっていきました。そして今では、耳の良さをいかして、PCを使って作曲も楽しんでいるのでした。「発達障害」の子どもたちは、「できないから支援がいる子」ではなく、「環境を整えれば、ぐんぐん力を発揮できる子どもたち」なのです。
●「発達障害かも?」と感じたら…。
では「発達障害かも」と感じた時、おうちの人はどう対応すれば良いのでしょうか?
ポイントは2つです。

①生活リズムを整える。
特に子どもたちにとって、睡眠時間はとても重要です。お子さんが小さければ尚更です。寝不足が続くと、子どもたちは「落ち着きがなくなり暴言が増える」「かんしゃくを起こす」「こだわりが強くなる」など「発達障害」とよく似た状態になることがあります。特にゲームやPC、インターネットが見れるテレビを購入する時には注意が必要です。普段の生活に電子機器を取り入れる際には、親子で使用時間などしっかり取り決めをしてからに。しかし、ルールを決めるだけでは子どもたちはなかなか守ることはできません。大切なのは、決めたルールを守れた時に、大人がちゃんと褒められるか。「ちゃんとルール守れて凄いじゃん」と具体的に褒めることで、子どもたちは電子機器と上手に付き合えるようになっていきます。

今の時点で既に睡眠のリズムが壊れている場合の対処方法について。早く寝る習慣の付いていない子どもたちに「早く寝なさい」の指示は難しく、怒られて余計に気が立って寝にくくなってしまいます。意識するのは起きる時間。お子さんと話し合いながら、朝起きる時間を少しづつ早くしていきましょう。ゲームを夜ではなく朝する時間を作るのも早起きのご褒美になり良いかもしれません。起きる時間が早くなれば、夜眠くなる時間も早くなっていきます。夜は、寝る時間の最低でも1時間前にはゲームや動画の視聴は控えて親子でゆったりと過ごしましょう。子どもたちと過ごす時間はおうちの人もスマホは眺めず、お子さんとの時間を楽しんで下さいね。

②怒る回数を減らす。
ここで「怒るのを我慢しましょう」と受け取らないように注意しましょう。なぜなら、「我慢」はリバウンドして後から大きくなって返って来てしまうからです。もともと「発達障害かも?」とおうちの人が悩まれている時は、怒る回数が増えて子育ての悪循環に陥っていることが多くあります。そして「発達障害」の中でもADHD傾向の子どもたちは、落ち着きがなく衝動的・不注意などの特徴から、怒られることが多くなってしまいます。子どもたちは怒られたら怒られただけどうなっていくのか。それはもっと落ち着きがなくなり、大人に反抗的になり、否定的な注目を引こうと悪いことをする子どもも出てきます。
これらの行動も「発達障害」の症状によく似ています。ではどうやって「怒る回数を減らす」のか。それは「好ましくない行動には目をつむり、好ましい行動を見つけて褒める」こと。

例えば、Bくんは身体の使い方が不器用で、ゆっくりした行動が苦手です。食器もガチャンと音を立てておくし、リモコンも放り投げていつも怒られるし、鉛筆の芯もどんどん折れてしまいます。学校でもおうちでも「乱暴に扱ってはダメ」「もっと優しくしなさい」と怒られていたBくんは、どうしたらそうできるのかが分からず、「いつも先生もお母さんも僕ばっかり怒る!」と腹が立ったり、「なんで僕ばっかり」と涙が出たり…。そんなある日、夕飯の後、食器を流しに持って来たBくん。ガチャンと音が立ちました。「あっ、また怒られる!」と思ったBくんにお母さんは「持って来てくれてありがとう」と声をかけてくれたのです。Bくんは驚きましたが、「明日はもう少し気をつけて置いてみるぞ」と思いました。それからお母さんは「そうだね。そのくらいの力で書くと丁度良いね」など具体的に褒めることを意識していきました。すると、Bくんの乱暴な行動が徐々に減っていったのでした。

以上2つのポイントで、①生活リズムを整えても、②怒る回数を減らしても、それでもお子さんの行動に変化はなく、気になる状況が続いていれば、相談に行ってみましょう。医療機関に行くのはハードルが高い、もしくはどこに行けば良いのか分からない場合には、学校に来るスクールカウンセラーや、市役所の保健師さんや発達相談の心理士さんに相談してみましょう。その時に小さい頃からのお子さんの状況についての聴き取りがあるので、母子手帳を持って行っておくと便利です。 

「発達障害」もしくは「発達障害かも」の子どもたちは、ダイヤの原石です。しっかり磨いて(環境を整える)いけば、キラキラと輝き出すのです。ただ、最初にも書いた通り、グレーの子どもたちの磨き方は分かりにくい。一度だけの相談ではなかなか状況が分かってもらえないこともあります。おうちの人が「この人なら安心して話せそうだ」と思える支援者さんに出会えるまで諦めず、お話しをしてみて下さいね。
土居和子 広島県教育委員会スクールカウンセラー
東広島市教育委員会スクールソーシャルワーカー
東広島市保育課保育ソーシャルワーカー
修道大学非常勤講師
ココロトモニ代表
ペアレントトレーニング、NPプログラム、BPプログラムなど保護者向け子育て講座
ティーチャーズトレーニング、事例検討会など保育士や教員向け研修会など
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