子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、偏食が激しくお菓子やカップ麺が大好きなんです…。

お菓子やカップ麺などの加工品はいくらでも食べるのに、毎日のご飯は好き嫌いや偏食で残されてしまう…。子どものために栄養バランスを考え、日々の食事を作っているママやパパにとって、子どもの偏食は大きな悩みです。そこで今回は、長年、栄養教諭として児童と向き合い、現在は広島国際大学の非常勤講師を務める大須賀先生に、子どもの偏食との向き合い方や親御さんへのアドバイスなどを伺いました。
偏食の原因は子どものわがままではない
子どもが偏食になる理由はいくつかありますが、大きく関与するのは、食べ物との最初の出会いです。幼い子どもの味覚や嗅覚は大人よりも敏感です。そんな時期に、「苦い」「臭い」と認識した食べ物を脳がしっかりと覚えており、ある程度心身が発達してからもその記憶を維持したまま、特定の食べ物を受け付けない子がいます。
また、大きなトラウマが偏食を引き起こす場合もあります。かつて鶏肉を全く食べられない子に出会いました。聞くと「小さい頃に鳥をしめる場面を間近に見てしまった」とのこと。まだ発達途中にあったその子にとって、相当ショックな出来事だったのでしょう。これは極端な例ですが、ある経験から特定の食べ物を拒否する子もいます。

つまり、偏食の原因は千差万別。親の調理や努力だけが全てではないのです。
快楽物質が作用するお菓子やカップ麺
お菓子やカップ麺は、子どもにとって味も見た目も魅力的です。しかし、それらを構成する成分のほとんどは、砂糖と油と塩。摂りすぎると、肥満だけでなく栄養バランスの乱れや虫歯の増加にも影響します。さらに、この3つはS(シュガー)O(オイル)S(ソルト)の頭文字をとってSOSともいわれ、生活習慣病を引き起こす大きな要因ともされており、大人もとりすぎないよう注意するべきものです。
特にお菓子に含まれる砂糖は、甘みからの刺激で脳の中で麻薬に似た物質が放出されます。つまり、甘いものは人間をやみつきにさせるのです。 また、油は多くのお菓子に見えない形で含まれており、カップ麺にも麺を揚げる際に使われています。脂質の過剰な摂取は、健康被害を引き起こす可能性があります。加えてカップ麵には、塩が多く含まれています。その塩分量は1杯で約5〜6gといわれており、1日の塩分摂取推奨量8g未満を、1杯のカップ麺でほぼ占めることになります。
大人でも、無性にお菓子やカップ麺を食べたい衝動に駆られるときがありませんか?なぜなら、甘味、油味、塩味が強く効いた刺激的な味は、「もっと欲しい」という感覚を脳が引き出しているからです。
味覚は子供の時につくられるといわれます。子どもの時にこの麻薬に似た味を覚えてしまうと、野菜のおいしさや出汁のおいしさは受け付けなくなってしまいます。

しかし、お菓子やカップ麺が全て「悪」というのも間違いです。甘いものは生活を豊かにしますし、カップ麺類は非常時に大変役立ちます。毎日食べ続けなければ、体に悪くありません。ここはバランスがとても大事です。もしこれらを毎日子どもが食べている場合は、まず回数を減らしましょう。毎日ではなく、3日に1回、1週間に1回とだんだん減らしていきます。そして、食品棚や冷蔵庫に保管しないようにするのも有効です。もちろん、急にストップをかけてしまうと子どもにストレスがかかってしまいます。過度な甘味や塩味に慣れてしまった子どもにとって、すぐに解決できる問題ではありません。焦らず、気長に、食生活を変えていく環境を整えていきましょう。
量の見える化で好き嫌いや食べず嫌いを克服
食が細い、または好き嫌いが多いお子さんには「食事の量の見える化」が有効です。以前、給食で出す牛乳を全く飲まない高学年の男の子がいました。牛乳のアレルギーはなく、飲まず嫌いといった印象でした。そこで試したのが50mlごとに数字を記載した自作カップに牛乳を入れ、無理なく飲むのを即してみる方法です。最初は50mlから始め、彼が飲めると「すごいね!飲めたね!明日はどうする?」と本人に意思確認をしました。次は100mlに目標設置。同じく飲めた日には「すごいね。ここまで飲めたね!」と声かけをしました。もちろん無理強いはせず、「飲みたくない」と言った日には飲ますことはありません。しかし、その方法を2週間ほど続けていると、結果全量200mlを飲めてしまったのです。ただ「好き嫌いはダメよ」と怒るのではなく、食べる量を数字にして見える化してあげると、子どもは「飲めた!食べられた!」という達成感と喜びを得ます。この方法は牛乳だけでなく、生野菜などにも有効です。スケールで量を測り、今日は10g、次は30gと徐々に量を多くしながら子どもに食べさせてみましょう。具体的な数字が、子どもの「できた!」を後押ししてくれます。食べて、褒められて、成功体験で食事を終えるというプロセスがとても大切なのです。
おいしいだけではない楽しく食べる環境づくり
先述の男の子が牛乳嫌いを克服したのには、もうひとつ大きな理由があります。それは食環境です。担任の先生だけでなく、クラス全員が応援団となって彼を励ましたのです。食事というのは、ただお腹がいっぱいになればよい、または栄養を摂取すればいいというものではありません。彼を取り巻く温かい繋がりが作用し、学級内で頼ったり頼られたりする関係性が、好き嫌いの解消に近付いたのだと思います。
給食だけでなく、全ての食の悩みに通じる重要事項が「食べる環境」です。せっかく作ったものを子どもが食べてくれないとイライラするのは当然です。大きな声をあげたくもなるでしょう。しかしそこはグッと我慢してください。怒られながら食べるご飯ほど、おいしくないものはありません。大人でも、苦手な人と一緒の食事の場では、食本来のおいしさを感じないものです。ご自身が楽しく食べられたシーンや、「おいしい」と心から思えた時は、どんな瞬間だったかを思い出してみてください。きっとそこには、「楽しさ」がプラスされていたはずです。
親から進めるおいしく楽しい食卓づくり
家庭内での食事がスムーズにいかないことは、大変なストレスでしょう。裏を返せば、子育てをしっかり考えているからこそ「自分の調理に問題があるのでは?」「もっと料理上手であれば…」と自分を責めるのです。そんな責任感は、少しだけ脇においてください。

お菓子やカップ麺はほどほどに。自分とお子さんの心が壊れない範囲で、ほんの少し食生活改善の計画を立ててみてください。それに、ご自身の経験でも、子どもの時には食べられなかったものが大人になり食べられるようになったり、好きに変化したりしたものはあるのではないでしょうか。食べられる物を増やすことは大切ですが、今はあまり心配し過ぎず、子どもの成長を気長に待ってみましょう。

そして何より「おいしく楽しい食事」を意識してみてください。ひと昔前の「家族が集まってご飯を食べる」団欒の場は、子どもを取り巻く勉学環境や親の就労環境の変化で、現代において日々整えるのは難しいかもしれません。時間や精神的に余裕のある時で大丈夫です。親が楽しくごきげんよくおいしそうに食べている姿を見せることも食育に有効ですよ。
大須賀恭子 広島国際大学 健康科学部 医療栄養学科 非常勤講師
広島県呉市内の小学校 7 校に41年間、栄養教諭として勤務。教育現場で子どもたちの食育と学校給食に携わる。2010年から2016年まで、広島県学校栄養士協議会会長、(公社)全国学校栄養士協議会理事を兼務。2020年より大学にて栄養教諭の養成にあたっている。
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