子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】エナジードリンクを飲む我が子。体に影響がないか心配です。

コンビニや自販機などで気軽に買える清涼飲料水・エナジードリンク。眠気を覚ます、集中力を高めるために大人が飲む飲み物でしたが、最近では好んで飲む小中高生も多いといいます。エナジードリンクは、子どもが飲んでも問題ないのでしょうか?管理栄養士の大須賀恭子先生に聞きました。
子どものエナジードリンク摂取は極力控えめに
カフェインを多く含む清涼飲料水の表示をよく見ると、「子どもや妊娠中の方、カフェインに敏感な人などは飲むのを控えるように」と書いてあります。この言葉が示すとおり、子どものエナジードリンク摂取は推奨されるものではありません。海外はもとより、日本でも約10年前から学校の養護教諭の間で問題視する声が上がっています。小学生の場合、パッケージのかっこよさや「なんとなくおいしそう」という興味本位から始まり、摂取が常態化していく場合が多いようです。なぜなら、エナジードリンクに含まれるカフェインが働き、「頭が冴える」「疲れが飛ぶ」などの効果が働くからです。特に受験などをひかえた子どもは、勉強に対する不安から定期的に飲んでしまうという傾向もあります。
エナジードリンクに含まれる多量のカフェイン
種類によって違いはありますが、エナジードリンクには多量のカフェインが含まれているケースが多々あります。よく見かける330ml缶1本に含まれるカフェインは、100~140mgです。健康的な成人が摂取してもよいとされるカフェイン量は 1日400mgなので、大人であれば大きな問題はありません。しかし、7歳から9歳の子どもは1日62.5g、10~12歳の子どもは1日85mgまでと、悪影響の無いカフェイン最大摂取量のボーダーは、低く設定されています。これらは内閣府の機関である食品安全委員会が定めたものであり、化学的知見に基づきリスク評価されたデータです。
つまり、小学生がエナジードリンク1日1本飲むと、推奨量の約1.5~2倍のカフェインを1日で摂取してしまうことになります。
カフェインのとりすぎに注意
カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶にも含まれており、それらを普段大人が嗜好品として飲むには問題はありません。仕事を頑張りたい、疲労感を軽減したいと珈琲をはじめとする飲料を楽しむ保護者の方も多いと思います。子どもであっても、緑茶や甘いコーヒー、紅茶を飲むシーンもあるでしょう。少量であれば、悪影響はありません。

しかしカフェインには、中枢神経に刺激を与え、眠気を覚まし、心拍数や血流が早くなる作用があります。これが、元気になったと感じるひとつの理由です。一方、タバコやアルコールのように依存性があり、カフェインを多く含む飲料がないと不安になったり、飲み過ぎて中毒を起こしたりする場合もあります。カフェインを摂り続けて体が慣れてくると、元気を出すためにより多くのカフェインが必要になり、依存度が高まります。また、一度に飲み過ぎると急性カフェイン中毒を引き起こす可能性があります。特に子どもは、大人よりも消化酵素が未熟なため、カフェインの副作用が発生しやすいといわれています。実際、エナジードリンクの短期大量摂取で子どもが救急搬送された例もあります。急性カフェイン中毒は、吐き気、嘔吐、手足のしびれなどの症状から始まり、最悪の場合、死に至るケースもあります。

エナジードリンクに限らず、カフェインを多く含む飲料の飲みすぎには注意が必要です。
子どもに寄り添って日常生活の見直しを
「子どもが隠れてカフェイン量の多いエナジードリンクを飲んでいる」「1日に何本も飲んでいる」という悩みは、昨今よく寄せられます。まずは、お子さんの日頃の様子を、じっくり観察してみてください。何か悩みを抱えていないか、ストレスを感じているのではないかなど、普段近くにいる保護者ならではの視点が必要になってきます。学校での様子を先生に聞いてみるのもおすすめです。
そして、エナジードリンクを飲むリスクを情報として話すのが良策です。実際の救急搬送ニュースを話すのもいいでしょう。突然の飲用禁止は、思春期の子どもにとって反発を買うだけです。きちんとした情報を伝えつつ、子どもの気持ちを読みとり、寄り添う姿勢をみせることが大切だと思います。
子どもが健やかに育つ環境づくりを
そもそもの話になりますが、子どもがカフェインを大量に摂取してまで頑張らなくてはいけない状況を疑問視しなければなりません。そういった状況を作り出している大人側に責任があります。子どもは、昼間にしっかり体を動かし、栄養のある食事をとり、夜はぐっすり寝るのが一番です。子どもの健やかな成長のためにも、大人がまず、エナジードリンクについて正しい知識を身に付けていきましょう。
大須賀恭子 広島国際大学 健康科学部 医療栄養学科 非常勤講師
広島県呉市内の小学校 7 校に41年間、栄養教諭として勤務。教育現場で子どもたちの食育と学校給食に携わる。2010年から2016年まで、広島県学校栄養士協議会会長、(公社)全国学校栄養士協議会理事を兼務。2020年より大学にて栄養教諭の養成にあたっている。
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